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勝手にふるえてろ(綿谷りさ)を一気読み

綿谷りさの久々の新作「勝手にふるえてろ」が出ていたので、週末に買って読んでみた。

前作の「夢を与える」は、かなりの長編だったけど、今回は割りと短めで、相変わらず中毒性のある文章なので、1時間ちょいで一気読み。

勝手にふるえてろは、特別な話を描いているわけではないけど、今を生きている普通の人の中の、ある種の人間の描き方が、とても丁寧で感心してしまう。誰かが死んだり、何か事件が起こったり、ありえないようなことがおきたりせずに、今の日常の一部を正確にとらえていて、その正確さが飛びぬけているから、そこが綿谷りささんの本を読もうと思う理由だと思う、もちろん純粋に面白いからでもあるけど。

小説は、自分にとっては贅沢な楽しみの一つ。気に入っていて、新作が出ると必ず買う作家が数人いて、綿谷りささんもその中の一人。年代が近いし、これからもずっと本を書いていってくれたら嬉しい。

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TRIP TRAP トリップ・トラップ

TRIP TRAP  トリップ・トラップ

いつの間にか新作が出てた。金原ひとみさんの新作短編集「TRIP TRAP」。
彼女の作品はずっと買って読んでいる.。なので、これも後でじっくり読むつもり。
女性作家の小説は、この金原ひとみさんと、綿谷りささんの作品しか読んでない。
世代が近いから共感しやすいのかもしれない。
どちらの作品も、普段言葉として意識に登らないものを削りだしてくれるから好き。
自分の中では、
金原ひとみさんの作品→なかなか寝付けないときに読みたくなる
綿谷りささんの作品→すでに眠気がきてて、これからぐっすり寝る直前に読みたい本
というイメージ。

TRIP TRAP トリップ・トラップ 金原ひとみ著

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綿谷りさ「夢を与える」「インストール」を読んだ

夢を与える 綿谷りさ

以前書いていた、綿谷りさの「夢を与える」読みました。(参照記事:綿谷りさ「夢を与える」
予想通り面白かった。アマゾンのレビューを見るとありふれたストーリーと書いてる人がいたけども、世の中のほとんどのことはありふれていて、それをどう描くかに面白さがあると思う。そのどう描くかについて綿谷りさはセンスがある。よい小説は言語化されないまま脳に存在している物に言葉を与えてくれる。この「夢を与える」は前作の「蹴りたい背中」よりさらに精密に物事が描かれていて、作家として数段成長したように感じられました。
綿谷りさ「夢を与える」(amazon)

インストール 綿谷リサ
「夢を与える」が良かったので、綿谷りさの他の本も読もうと重い「インストール」を買いました。(「蹴りたい背中」は芥川賞受賞作が載る文芸春秋を買ってリアルタイムで読んでいた。

この「インストール」は彼女が高校生の時に書いた小説だそうで、嫌でもその才能を感じさせられます。文体がどうとか、内容がどうとか関係なく、一言でいうと作品全体を通して感じられるセンスがいい。私は人間の能力なんてものは誰もそんなに変わらないと思ってますが(20歳過ぎてやっと気づいた・・・)、ときどきある特定の能力に関しては標準偏差の外にいる人間もちゃんと存在するのを知って嬉しくなります。

インストール 綿谷りさ(河出文庫)amazon
私は単行本を買って読んだんですが、アマゾンを見てみると、文庫版が出ていて、インストールの文庫版には「You can keep it.」という書き下ろしの短編が収録されているとのこと。これ読んでみたいから、文庫版も買わないと♪。
今回、綿谷りさの「夢を与える」を読んでみて、私の中のこの作家の新作が出たら必ず買って読むリストに入りました。

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綿谷りさ「夢を与える」

前から読もうかどうか迷っていた綿谷りさの小説「夢を与える」。
佐藤優の新刊「功利主義者の読書術」を読んでいたら、本の中でこの綿谷りさの小説「夢を与える」が紹介されていてベタ褒めされていたので、素直に読んでみることにした。まだ途中だけど、あらすじを読んで想像していた印象とは良い意味で違う。ストーリーは芸能界の中で育っていく一人の女の子の話で一見ありふれたているけれでも、主人公の女の子が、実は海とか自然に魅せられていたり、芸能界の仕事で車のレースの話が出てきたり、とやけに現実味のある話になっている。小説にならなさそうないかにもありそうな話、それを才能のある人が書くとこうも面白く読めるのかと思う。ありふれたものを、精密な描写によって描き出すことで、普段は無意識の中にあるヒリヒリしたものを引き出して目の前にそっと持ってきてくれる。例えるなら、普段そこらへんいいる昆虫を電子顕微鏡で拡大して見ると神秘的なものを感じるのに似ている。綿谷りさという人は、観察力とその観察したことを表現する能力がずば抜けているだろうと感じる。素晴らしい小説だけど、表面的なストーリーだけみるとつまらなそうに見えるから売れにくい本だろうなぁと思う。

綿谷りさ「夢を与える」amazon

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「村上龍」と「綿谷りさ」のありそうで無かった組み合わせ新装版「限りなく透明に近いブルー」

「村上龍」と「綿谷りさ」の組み合わせはいかにもありそうですが私が知る限り今まで無かったんですよね。それが今回、新装版の限りなく透明に近いブルーの解説を綿谷りさが書いていました。結論から先にいうとこの綿谷りさの解説が非常に良かったです。

いつも大型書店に行ったときは、店内を一通り全部見て回ります。文庫のコーナーで村上龍のとこを見ると限りなく透明に近いブルーが新装版になっているのに気づいた。村上龍の小説はほとんど読んでいますが、この限りなく透明に違いブルーは最初の数ページを読んだだけで体が受け付けなくて最後まで通して読んでいない。ただ最後のリリーへの手紙のところはつまみ読みした。新装版の綿谷りさの解説を読んで刺激されたのもあるが、最近この限りなく透明に近いブルーをちゃんと最後まで読めるような気がしてきている。体が欲求しているような気がするんですよね。個人的な理由からなのか、時代の影響からなのか、ただの気のせいなのかはわかりません。

村上龍の「69」が新装版になったときは金原ひとみが解説を書いていました。金原ひとみと村上龍の小説は似ている気がして二人の組み合わせはしっくりくる。ただ小説に暴力とかセックスが出てくるからそう思うだけかもしれない。金原ひとみは子供の頃に村上龍とか山田詠美の小説を読んでいたと何かのインタビューで言っていたのを覚えている。以前FM東京の番組で村上龍と対談もしていた。金原ひとみの声が異様に綺麗だった記憶がある。金原ひとみの小説は新作が出るたびに買ってほとんど読んでいる。彼女の作品は言葉にならないものを表現し普段使わない脳の部分の存在に気づかせてくれる。

綿谷りさと村上龍のからみはいかにもありそうだけど、よく考えると二人は全然合わなそうにも思えます。綿谷りさが子供の頃に村上龍の本を読んでいたというのも聞いたことがなった。でも限りなく透明に近いブルーの解説を書いているのを見た瞬間にやっときたかという印象を持った、と同時に怖いもの見たさで恐る恐る解説を読んだ。

綿谷りさの著書は芥川賞を受賞した「蹴りたい背中」しか読んでいない。綿谷りさが正統派の美人なので、たいした小説は書けないだろうと食わず嫌いだったのかもしれない。「蹴りたい背中」の内容はもう詳しくは覚えていない。読んだときに感じたある種の感情、言葉にならないひとつのある概念みたいなものが小説一冊を通して脳内に浮かびあがって来た記憶は残っている。要するにいっき読みするくらいには面白かった。今度のことをきっかけに綿谷りさの他の作品も読む予定。

綿谷りさの解説を読んで、同時に芥川賞と受賞した綿谷りさと金原ひとみの二人に持っていた印象は実は逆だと感じるようになった。二人の小説を読んでみると一見二人の見た目と同じように金原ひとみがドロドロしていて、綿谷りさがすっきりしているように感じるが、実は綿谷りさの方がドロドロとしたものを心の奥底に持っていて、彼女の方が村上龍に似ていると感じるようになった。綿谷りさが書いていた限りなく透明に近いブルーの解説は予想以上に良くて、脳に強くインプットされてきた。具体的にどうよかったのかは説明できない。ただ、以下のようなことを書いていたのが記録に残っている。例えば、とても臭い腐った食べ物があったとする、村上龍の小説はこの腐った食べ物の匂いを読者に想像させるだけではなく、読者の口を無理やりこじ開け、口の中に突っ込んでこようとする。この表現はすごく正確に村上龍の小説を説明していると思う。

以下、限りなく透明に近いブルーの表紙の移り変わり。
限りなく透明に近いブルー
限りなく透明に近いブルー

1976年に出版された一番最初の単行本の表紙、今でもアマゾンで買えるようですね。意外です。

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫 む 3-1)
限りなく透明に近いブルー (講談社文庫 む 3-1)

新装版になる前の文庫の表紙、たぶんずーとこの表紙で変わっていないと思う。カバーデザインは村上龍となっているし、最後の手紙の内容からして村上龍本人が描いたんでしょうか。

限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)
限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)
今回新装版になってこのようになった。この青っぽい色は限りなく透明に近いブルーなんでしょうか。別に新装版になったからではないですが、この本にはこの表紙の方がしっくりきます。以前のリリーの横顔と思われる表紙は、最後のりゅうからリリーへの手紙の内容そのままで、頭にイメージが残らない気がしていた。解説で綿谷りさが書いている読者の頭の中にイメージを作り出すことがなかった。

英文版 限りなく透明に近いブルー - Almost Transparent Blue
英文版 限りなく透明に近いブルー – Almost Transparent Blue
英語版の表紙。英語版のコインロッカーベイビーズを持っていますが似たような雰囲気の表紙。

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夢を与える
夢を与える 綿矢 りさ

おすすめ平均
starsまぁまぁの作品
stars著者の「強み」がすべて失われた
stars普通の出来
stars読んで後悔
stars毒にも薬にもならない

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綿谷りさの一番新しい著書はこれ。国家の罠で有名な佐藤優氏がこういう小説が読まれるなら日本は大丈夫と言って紹介していた気がします。アマゾンの評価はボロボロです。まぁ気にせず読みます。金原ひとみは結構本を出してるけど、綿谷りさは蹴りたい背中 (河出文庫)インストール (河出文庫)の3冊しか書いていないようですね。大学に行ったから忙しかったんでしょうか。これからに期待です。

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