前から読もうかどうか迷っていた綿谷りさの小説「夢を与える」。
佐藤優の新刊「功利主義者の読書術」を読んでいたら、本の中でこの綿谷りさの小説「夢を与える」が紹介されていてベタ褒めされていたので、素直に読んでみることにした。まだ途中だけど、あらすじを読んで想像していた印象とは良い意味で違う。ストーリーは芸能界の中で育っていく一人の女の子の話で一見ありふれたているけれでも、主人公の女の子が、実は海とか自然に魅せられていたり、芸能界の仕事で車のレースの話が出てきたり、とやけに現実味のある話になっている。小説にならなさそうないかにもありそうな話、それを才能のある人が書くとこうも面白く読めるのかと思う。ありふれたものを、精密な描写によって描き出すことで、普段は無意識の中にあるヒリヒリしたものを引き出して目の前にそっと持ってきてくれる。例えるなら、普段そこらへんいいる昆虫を電子顕微鏡で拡大して見ると神秘的なものを感じるのに似ている。綿谷りさという人は、観察力とその観察したことを表現する能力がずば抜けているだろうと感じる。素晴らしい小説だけど、表面的なストーリーだけみるとつまらなそうに見えるから売れにくい本だろうなぁと思う。
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